NPOに関する本は沢山出ていますが、このコーナーでは、法人設立のマニュアル本は除いて、これだけは読んでおいてよいという入門書、NPOをさらに詳しく知りたい人のための基礎文献、個別のテーマを深く研究した専門書などをご紹介します。
実際にNPOの「経営」に携わってきた経験を踏まえて、NPO活動について総合的に解説した入門書。
現代文明におけるNPOの位置付けから始まり、マーケティングの必要性やNPOの失敗の分析までNPO活動の諸相を網羅しつつ、NPOを通じた社会活動の意義を説いている。
日本NPOセンターで行なわれたNPO塾の講座内容をまとめたもの。NPOの基礎知識を包括的に理解できる入門書。中小のNPOの実践の現場からの声を通して、NPOとはどういうものかという具体的な姿が浮かび上がってくる。第一巻はNPO法成立直前のタイミングで刊行されている。
日本NPOセンターで行なわれた実践講座の記録をまとめたもの。現場のNPOリーダーたちによる具体的な活動の事例報告が中心で、現場の熱さや雰囲気がよく伝わってくる。きちんとしたマネジメントはもちろん必要だが、NPOという形に魂を入れるものは人間力・個人力であることがわかる。
ドラッカーはNPOの最大の思想家。NPO活動の精神論とそれを現実に移すための経営の実践論を統一した本書は、NPOに関わる者の指針になるであろう。NPO活動を人間の成長の場と位置付け、社会を改良し発展させる市民の使命と責任を熱く説く。人生論としても魅力的な本。
アメリカの非営利セクターの歴史と現状について平易に説かれている。NPO先進国アメリカにおける非営利セクターが、市民、政府、企業が複雑に関連して成立している構造を分析し、それぞれの役割を明らかにしている。今後のNPOの方向性を知るのにも重要な基礎的文献。
ドラッカーの非営利組織の評価理論を踏まえ、NPOの問題点を分析している。文体が生硬で取っ付き難いが、重要なポイントを押さえている。
NPOにありがちなアマチュアリズムの弱点に対して批判的な視点で書かれているのが貴重。
NPOの需要は拡大しているが、政府のNPO予算削減と寄付金の減少によって、アメリカのNPOは苦しい財政状況に置かれている。一方、アメリカにはNPOが営利組織化し、腐敗し、不信の目を向けられているという問題もある。本書はこのようなアメリカの現状を報告するとともに、今後のNPOのあり方の再構築を図っている。
協同組合や社会的企業を広く含んだヨーロッパ型NPOの理論書。福祉国家の危機と社会的ニーズの多様化という状況に対して、新自由主義モデルによる構造改革とセーフティネットによるフォローという方向ではなく、政府でも市場でもない市民参加型の福祉社会という第三の道のヴィジョンを描く。翻訳が読みづらいのが難点。
フランスを中心としたヨーロッパの非営利セクターの捉え方はアメリカのそれより広く、NPOだけではなく、協同組合・共済組織・NPOなどの民間の非営利経済全体を指し、この領域を社会的経済セクターと呼ぶ。本書は社会的経済論の総論と、EU諸国・アメリカ・日本などで展開されている個別の現状分析を行なっている。
実際にNPOマネジメントに携わっている立場から、営利企業と非営利のNPOの比較を通じて、NPOの問題点と課題、どう運営して行くべきかについての方法論や指針を示している。
多数掲載されている図表は、見事に整理されていて理解しやすく、利用価値が高い。
NPOは大きな組織になればいいというものではなく、組織の規模は目的と必要によって決めればよい。また、個人ボランティア・小グループと組織化したNPOは一律に論じられず、規模と状況に対応した柔軟なマネジメントを必要とする。本当に意味のある活動をするという視点から、批判的かつプラグマティックに書かれた上級篇。
従来の産業とは異なる新しい部門の経営学を開拓する「経営学のフロンティア」シリーズの第一巻。非営利組織の位置付けとマネジメントを、企業経営との比較を軸に研究している。田尾雅夫「NPOにおける経営管理の困難さについて」は、NPOマネジメントの問題点を網羅的に分析し、組織力と個人力のバランスを考えるのに必読。
アメリカで非営利経営学を学んだ著者が、NPO経営コンサルティングの立場から、NPOが組織として経営基盤を確立するためのノウハウを、ガバナンス・資金調達・企業とのパートナーシップ・人事・労務管理・評価などに亙って解説したもの。NPO経営の実際を具体的かつ詳細にアドバイスしている。
経済全体、社会全体にNPOを位置付けて、NPOの理念・制度・実態・設立・経営までを総合的・客観的に解説した本。社会人や大学生が一般教養としてNPOを知るのに最適の参考書。NPOの社会的役割という観点から、地域通貨やパートナーシップなどが論じられている。
NPOを軸にした地域ベースの経済活動、いわゆるコミュニティビジネスが盛んになっている。それは住民による地域の活性化や福祉の充実など、コミュニティの維持・再生・発展の活動である。コミュニティビジネスの現状と可能性を、豊富な実例を挙げながら解説している。
福祉NPOの現状と可能性を、法律や行政との関係、地域が抱えている諸事情などを踏まえながら解説している。限られた条件下で多様な個性を持った人々が行なっている福祉NPOの実際の現場の視点から具体的に書かれており、非常に参考になる。個別の実例を通して日本の福祉の全体構造が理解できる最適の入門書。
個人や集団の多様性を最大限考慮した慎重・柔軟な普遍主義という立場を前提に、グローバルな民主主義を推進するものとして市民活動を位置付け、NPOのアドボカシー的側面に焦点を当てて、市民(特にマイノリティー)の意思表明のツールとして電子ネットワークを利用する戦略を提唱している。
小中学生向けNPO入門書。基本的なことはすべて押さえられており、非常にわかりやすく書かれているので、NPOについての基礎知識を知りたい大人でも、とりあえずこの三冊を読んでおけばいいとも言える。活字が大きいので、高齢者の読者にも適している。
破綻した旧来型の公共事業システムを分析し、それに代わるポスト公共事業社会の在り方を提言した本。現状の民営化路線による公共事業改革には市場化の功罪両面があるので、それを踏まえながら、地域や市民のニーズに密着した市民セクターによる自治的な公共事業の方向を提案している。
日本ではNPOはあくまでボランティアであり、ビジネスをするのは不純だという考え方が根強い。著者はそうした偏見は日本のNPOが発展するネックになっているとして、事業型NPOの社会的意義とアメリカ的なビジネスモデルによるノウハウを説いている。
近代以降の日本は、国家主導かつ企業の効率優先の都市開発によって、人が暮らす環境としてのまちづくりを無視してきた。市民主体のまちづくりへの転換が求められるが、個人エゴの民主主義ではなく、郷土愛と公共性と美意識を持った市民による民主主義の必要性を説いている。
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北九州市立大学の楢原真二教授と学生グループが、NPO法人ドリドリ会と協力して、北九州市のNPOを徹底的に調査取材した労作。地域におけるNPOの基本情報を市民に開示し、NPOに対して行政ではなく「市民によるゆるやかな監視システム」の役割を果たすべく作成されている。
関西学院大学教授でNPO法人ほんまちラボまちづくり道場の道場主が、画一的な都市デザインではなく個性あるまちづくりの極意を説く実践的まちづくり書。町に飛び込み、町の価値・魅力を発見し、まちづくりにとって真に必要な人と出会うことができるまちづくり人になるための修業の道を、達人の自在な境地で語っている。
既存の営利的な金融ではなく、お金が預金者が望む方向(たとえば環境や女性支援や映画作りなどのような社会的文化的役割を果たす方向)で、借り手に渡るように運営される市民主導の金融システムを金融NPOと言う。金融NPOのこれまでの実践例、日本の行政の対応の遅れ、世界の金融NPOの動向などについて解説した本。
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非営利や善行というイメージに基づく「NPOの神話」を相対化し、どれだけ社会的役割を果たすことができているかというシビアな観点からNPOを論じている。日本のNPOの歴史と現状と課題がコンパクトにまとめられており、マネジメントについての目配りも行き届いた絶好の入門書。